去る七月十七日に公式発表となり、この度私は、第四十四回伝統文化ポーラ賞優秀賞を受賞しました。十二月十一日に授賞式があります。
六月初めにポーラ伝統文化振興財団からお知らせを頂きました。本当に〝寝耳に水”のことで心底びっくりしました。
お電話だったので最初は何のことかわからず、「本当に私なんですか?私でよいのですか?」と繰り返し、失礼だったのかもしれませんが「そもそも私の舞台をご覧になったことがあるのですか?」とまで聞いてしまいました。平成三十年に法政大学観世寿夫記念能楽賞を頂いた時は、只々、涙ポロポロでした。
その時、自分は能楽師としてこれまでずっと片足で立っていたけれど、これでやっと二本の足が地に着いた、これからは胸を張って「私は能楽師です。」と言えるようになったのだと思いました。あの時の感激は、生涯忘れ得ぬものとしてあります。それまでずっとどこかに後ろめたさがありましたから。
又、この賞は銕仙会の先輩方の方々も頂いていて、私もよく知っている能楽界の中での賞でした。
でも今回の賞は全く外の世界から評価して頂いた、社会的にも認めていただいた、ということが心から有難く嬉しく、もっともっと努力を重ねてこの賞に恥じない舞台を心がけなければという思いを今、強くしています。
けれど、年と共に能に対する一曲一曲に対する思いは深く、豊かになりますが、それに反比例して体力・筋力・記憶力は減退するでしょう。これからはそれらとの勝負と思っています。あと十年は舞台に立ちたく思います。そしてまだまだ闘うことも多くあります。気を許さぬように過ごしたいです。どうぞ舞台をみていただければ幸いです。
この暑さはいつまで続くのかと思われますが、だいたい昔から暑さ寒さも彼岸まで、と期待しているこの頃です。
来る九月二十九日(日)午後二時開演、国立能楽堂にて第二十四回鵜澤久の会を開催いたします。
二十六年振りに「砧」(きぬた)を、“梓之出”の小書で舞います。世阿弥の自信作であり傑作です。今の自分がどのような砧を舞うのか日々の稽古で探っています。
ぜひ見にいらして下さい。券はまだ充分に余裕があります。(SS席は完売しております)
砧を楽しんで頂く為の事前講座も二十一日(土)午後三時より国立能楽堂二階講義室にて開きます。入場無料(券ご購入の方対象。当日購入も可能)です。
よろしければこれもお出で下さい。
公演のお申し込みは、下記よりご連絡ください。
メールアドレス
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